母乳育児と薬vol2


授乳、妊娠中の薬の安全性は、今までの使用経験で判断されている。

授乳、妊娠中の薬の影響についての人間での調査は、世界中でほとんど行われていない。
人間と動物では妊娠や授乳中の薬の服用の危険度はかなり異なるので、動物実験だけでは人間への 危険度の正確な評価はできない。あくまで推定になる。
人間で妊娠中や授乳中の薬の危険性を評価する調査は行われない理由は、2つある。
  1. 胎児の死亡や奇形につながる重大な危険を招く恐れがあるため。
  2. 危険な調査に見合う市場性がない。薬の服用中は授乳を中止する選択ができるため。
このような理由で、授乳、妊娠中の薬の安全性の評価は、過去の経験や薬の作用を推定して行われている。
動物実験での副作用があれば、それも参考にされている。
今後も新たな報告によって評価が変わる可能性があり、流動的。

参考
「授乳婦と薬」東京都病院薬剤師会 じほう
「妊娠と薬」虎ノ門病院 佐藤孝道 じほう


授乳、妊娠中の薬の危険性は過剰に評価される傾向がある。

実験や使用経験がない場合、製薬会社は「使用経験がない」、「安全性は確認されていない」と 添付文書に記載する。
新薬であるほど使用経験がないので、多くの新薬は服用に条件がつく。

産婦人科学会や小児科学会では独自の服用基準を設けることがある。

例:妊娠中のインフルエンザワクチン
添付文書では妊娠中に勧められていないが、産婦人科学会では勧めている。
虎ノ門病院や聖路加国際病院では、独自の基準で妊娠中の薬の評価を行っている。
アメリカ小児科学会では授乳中の薬の基準を示している。日本では多くの薬が添付文書では条件がついて 投与しにくいが、そのなかの多くの薬がアメリカ小児科学会の基準では危険性が低いとされて投与されている。
産婦人科学会やアメリカ小児科学会の基準は、産婦人科や小児科以外では一般的に用いられていないので、 他の科では添付文書に従って処方するのが通例。
したがって、禁止でなくても直接妊娠中や授乳中の患者や授乳中の乳児を扱わない科では、投薬しないことが 多い。
授乳中の薬の安全性

ほとんどの薬は母乳中に移行するが、母乳中に含まれる薬の量は、投与した量全体の1%以下のものが 多い。10%以上のものは注意を要する。

●5%以上の薬剤(主なもの)●
  • 授乳を避ける:塩酸モルヒネ(麻薬)、フェノバール(抗てんかん薬)、ジフルカン(抗真菌薬)、
    ヒドラ(抗結核薬)
  • 授乳禁止  :ジスロマック(抗生剤)、バンコマイシン(抗生剤)、フラジール(抗真菌薬)、
    テノーミン(降圧剤)、リーマス(抗うつ剤)
  • このうちジスロマックとバンコマイシンは直接乳児に投薬することがあるので、小児科医が判断すれば投薬可能。
パセトシン、ワイドシリン、エリスロシンなど乳児に使うことがガイドラインで勧められている抗生剤も、 添付文書では「授乳は避ける」となっている。日本の添付文書の基準は現実的ではないことがある。 抗がん剤は授乳を避ける。
  • 授乳中の乳児に対する影響は知られていないが、懸念があるもの: 向精神薬、抗てんかん薬、抗うつ薬、プリンペラン、フラジール、ファシジンなど

乳児自身に投薬してよいものは可、古い薬は経験的に問題ないものが多い。 国立成育医療センターの専門外来では、授乳や妊娠中の薬の相談を行うことができる。

参考:妊娠と薬剤

国立成育医療センター内 妊娠と薬情報センター
「授乳と薬について」 http://www.ncchd.go.jp/kusuri/junyuu.html


妊娠と薬について
  最終無月経からの日数 危険度の評価点(点)
無影響期 0日〜27日
絶対過敏期 28日〜50日
相対過敏期 51日〜84日
比較過敏期 85日〜112日
潜在過敏期 113日〜出産
※危険度の点数について(点数はあくまで目安 虎ノ門病院)
0〜6点:影響なし
7〜11点:注意
12〜19点:警戒
20〜25点:危険

相談薬剤で頻度の多いもの:
  1. 解熱鎮痛剤
  2. 総合感冒剤
  3. 抗生物質
  4. 消化性潰瘍治療剤
  5. 抗ヒスタミン剤

薬剤危険度点数×服用時危険度点数=危険度総合点数
医療機関ではこのような基準で判定するが、あくまで一般的な目安なので、自分で判断しないでください。

妊娠中の危険度(アメリカ FDA基準による)A,B,C,D,E,Xの5段階評価
   危険度Xの薬剤:卵胞ホルモン(経口避妊薬)
              ビタミンA、K剤
              メチル水銀(服用の可能性ほぼなし)
              放射性ヨウ素製剤
              ワクチン類(ムンプス、麻疹、風疹、天然痘、ポリオ、黄熱病、コレラ)
   他に避けたほうがよいもの:
              飲酒(奇形の可能性):少量ならよい
              喫煙(喫煙、喘息、行動障害など)

監修:くやま小児科医院院長 久山登先生



Copyright(C) 2003-2007 Lactinaclub All rights reserved.
inserted by FC2 system